Fighting Darius 忘れたかった男との再会 1巻 - 表紙

Fighting Darius 忘れたかった男との再会 1巻

Nicole Riddley

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2.3k
Chapter
15
Age Rating
18+

Summary

「ペルセポネ」ベッド脇の照明の薄明かりの中、背の高い人物が影のように優雅に立ち上がった。「なぜ口紅が滲んでいる?」

 彼だ…。最後に会ったのは、3年前。彼が私の心を粉々に砕いたあの夜。その彼が今、予告もなしに私の寝室にいる。私を待っていたのだ。

 ダリウス。

 彼は、ゆっくりと私に歩み寄る。片手で私の顔を掴むと、別の手で体を引き寄せた。

「他の男の匂いがするぞ、ペルセポネ」そう、低く唸った。

ダリウス・イヴァノヴィッチ・リコフ。パーティーで出会い、一瞬にして彼に魅了され、彼を見る目を離せなくなった18歳の人狼・ペニー。二人は運命の絆によって結ばれるのか?

ギデオン& Trapping Quincy に続くシリーズ、さらに深い世界へ飛び込もう。

対象年齢18歳以上

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滲んだ口紅

ペニー

ストロボライトの下、温かい手が腰に触れるのを感じる。振り返ると、ダークブラウンの瞳が私を見つめていた。少し酔ってはいても、が人狼であることはわかる。

鋭く射るような瞳。短く刈ったダークブラウンの髪。長身の体にはあちこちにタトゥーが入っている。

片耳にはピアス、唇にもリップピアスを嵌めている。

 気がつくと、私は歯と舌で男のリップピアスを味わっていた。 

どこか危険な香りがする男だった。でも私は酔い過ぎていて、正常な判断ができない。

リップピアスを歯で挟んで吸いつき、舌の上で転がす。温かい金属の感触がたまらない。の両手が私の全身を撫で回す。そのままキスをリードしようとするけれど、私は逆に彼を壁に押しつけ、こちらから激しくキスをした。

男は唇を重ねながら小さく笑い、私の体を引き寄せた。

 身を離すと、リップピアスの男は消えていた。

代わりに目の前に立っていたのは、ダリウス。 彼はにやりと笑って、言う。

「あんな男、求めてもないんだろう、ペルセポネ」

私を正式な名前で呼ぶのはダリウスだけだ。

 私は怒りにまかせて、彼を突き飛ばした。よろめきながらも、彼は微笑む。まばたきした次の瞬間、ダリウスは消えていた。

リップピアスの男が、困惑した様子で私を見ている。

「俺が何かしたか?」

男が尋ねる。私の態度が突然変わったことに戸惑っているのだ。 違う、聞きたいのはこの声じゃない。私は謝ることすらせず、急いでその場を去った。

キスのうまい男だった。でも、彼はダリウスじゃない。

(ああ、もう!何で?! また彼のことを考えてる)

どうして彼のことが頭から離れないのだろう。

このパーティーから出ないと。

***

ペッパースプレーを強く握りしめながら、私はふらつく足で家に向かった。

運転して帰るには、酔い過ぎていた。

背後でかすかな音がした。あわてて振り向くけれど、誰もいない。空っぽの通りに風が吹き抜けていく。

あと数時間もすれば、朝日が顔を出す。でも今は、妙に不吉に点滅する街灯の明かりだけが頼りだった。

ホラー映画は結構見てきたから、わかる。チカチカと点滅する明かりは何か良くないことが起こる前触れだ。

学生街に住んでいるとはいえ、用心してし過ぎることはな買った。女性にとっては、街のいたるところに危険が潜んでいるのだ。私のような人狼にとってもそれは同じだった。メスである私の能力には限りがある。ライカンでもないし。もしそうだったら、話は変わっていたんだろう。

もしかしたら、彼とも…ううん、もういい。彼のことは、もう名前すら思い出したくない。

浮かんできた思考を押しやり、別のことを考えようとする。 ここ1ヶ月、この地域では何件か強盗事件が発生していた。容疑者はいまだ捕まっていない。普段の私なら、恐れることもなかった。ライカンの王族だらけの家で暮らしているのだから。 何せ、皇太子まで同じ屋根の下にいるのだ。

でも、今夜は私一人だ。

家の玄関が見えてきて、少し気持ちが落ち着いた。でも、そこで、自分の寝室の明かりがついていることに気づく。窓の向こうには、人影。通りを見下ろしているように見える。

まばたきして目を開けると、人影は消えていた。

きっと、光のいたずらだろう。ちょっと飲み過ぎたのかもしれない。

『彼』のことを忘れたくて、つい深酒をしてしまう。

(でも…ちょっと待って。寝室の明かりは出かける前に消したはず)

ううん、ルームメイトの誰かが電気をつけたのかもしれない。

私は頭をぶるぶると振って、嫌な想像を頭から消そうとした。

(バカなこと考えないの、ペニー)

自分を安心させようとする。

もともと、記憶力がいい方じゃないんだから。

家の中は、かなり暗かった。階段の横の明かりはいつもつけてある。プールの照明もあるから、屋内が真っ暗になることはない。

とても静かだった。聞こえるのは、キッチンの冷蔵庫のブーンという稼働音とプールの濾過ポンプの音だけだ。

遠くで、海岸に打ち寄せる波の音が響いている。

カウボーイブーツを脱いで、タイルの床の上をできるだけ足音を立てないように歩く。

階段を上りながら、妙な違和感を感じた。

思考がはっきりしない。そろそろ飲みに行くのはやめて頭をクリアにしないと、おかしくなりそうだ。

嗅ぎ慣れた、うっとりするようなあの匂いが鼻腔を満たした。途端に、頭が真っ白になる。

「ペルセポネ」ベッド脇の照明の薄明かりの中、背の高い人物が影のように優雅に立ち上がった。「なぜ口紅が滲んでいる?」

彼だ…。

最後に会ったのは、3年前。

彼が私の心を粉々に砕いたあの夜。

その彼が今、予告もなしに私の寝室にいる。私を待っていたのだ。

ダリウス。

彼は、ゆっくりと私に歩み寄る。

片手で私の顔を掴むと、別の手で体を引き寄せた。

「他の男の匂いがするぞ、ペルセポネ」そう、低く唸った。

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